2020.03.27

わかったら俺が買う

ボートレースのお客さんと言えば、なにかしらそれなりの雰囲気を持ってい
ます。たとえば見知らぬ土地のボートレース場やボートレースチケットショッ
プに行こうとします。最寄り駅に降りたとき、どこへ行けば無料バスがあるか
わかりません、何番乗り場から乗れば良いのか、それとも駅から離れたところ
にあるのか。そんなとき、なんとなくボートに行くだろうなという雰囲気を持
った人たちの後についていくと、ちゃんと無料バスに発着所にたどりつけるも
のです。
雰囲気を醸し出すのは服装です。ネクタイをしたサラリーマンがデイレース
の舟券を買いに行くことはまずないでしょう。電話投票になかった頃はボーレ
ース場でもよく見かけたものです。営業の途中に時間待ちがあります。そんな
ときに立ち寄る姿がありました。昔は場内の呼び出し放送があって「何々会社
の何々様、至急会社までお電話ください」とという場内アナウンスがレースの
合間に流されていたものです。ポケベルが普及し、今はスマホの時代です。場
内アナウンスの必要もなくなりました。
ギャンブルは、ギャンブルをやるためにあるというが本当のところです。
「ギャンブルで家を建てた者はいない」と言いながら、毎日ボートレース場や
ボートレースチケットショップに足を運んでいるのです。負けることがわかっ
ていながら足を運ぶのは、かすかな希望を持っていたいからです。代えがたい
ものがあるからです。話を聞けば家を建てるほどのお金を手にした人もいま
す。しかし、そのお金は家を立てるだけではなく、またボートレースをするた
めのお金なのです。
舟券を買うことが何よりも優先すると、服装にお金を使わないようになりま
す。何年も同じような服装のお客さんが多いのも特徴です。それが雰囲気を醸
し出すことにつながるわけです。
自分スタイルを崩さないのがボートのお客さんです。自説に固執するという
か、崩しません。レースが終わって自分の予想が外れても、自分の愚かさを認
めようとしません。「わかったら俺が買う」と居直ります。「俺のわからない
レースは、まともなレースではない」と言いたげです。